いまの仕事=ワーク?レイバー?

働き方改革の前に「働く」を考える

「働き方改革」や「ワークスタイル変革」などのことばがメディアやニュースで頻繁に耳にするようになり、さまざまな法改正などもありニュースだけでなく実際に働き方改革に取り組んでいる企業も多いことでしょう。

そもそも働き方改革という流れになったのは、日本の多くの企業では長時間労働が常態化している上に世界各国と比較して非常に低い労働生産性が問題になったからです。企業の業務効率をアップさせ労働者の生産性を上げて労働時間を削減することが働き方改革の中身です。

だれしも好きこのんで生産性の低い作業や長時間労働なんてしたくないはず。でもこれが日本の企業に広く常態化してしまったのはなぜなのでしょうか。そもそも働くとはどういうことなのでしょうか。

「働く」には3種類ある

日本語では何らかの仕事をして対価を得ることを「働く」といいますが、単純に仕事をするという意味以外に深いニュアンスはあまり含まれていません。同様に「仕事」や「労働」などにもそれそのもの以外に意味がないように思います。

しかし一橋大学大学院教授の楠木建氏は英語には「働く」にニュアンスの異なる3つのことばがあるといいます。「Work(ワーク)」「Labor(レイバー)」「Play(プレイ)」の3つです。日本語訳ではどれも「仕事」や「労働」になりますが、これらの英語にはそれぞれ別の意味があります。

Work(ワーク)

産業革命のあと、20世紀以降になって浸透してきた概念。自分が持っているスキルを労働市場に提供して対価を得ること。Workには自由意思による相互の契約があり、職業選択の自由もある。

Labor(レイバー)

Workの概念が生まれる以前の仕事を意味することば。命令に忠実に従って実行する労役。いわゆる古代の奴隷を連想させるラテン語系のことば。

Play(プレイ)

独自の才能やセンス、能力が求められる仕事。一流のプロスポーツ選手や将棋の名人のような高度な特殊能力をもつひとたちの仕事をいう。一流選手のことを「プレーヤー」とは言っても「ワーカー」とは誰も言わない。経営者もPlayと言えるだろう。

自分の仕事はWork? Labor? Play?

働くを3つに分類したところで、果たしていま自分がしている仕事は「Work」「Labor」「Play」のいったいどれに当てはまるでしょうか。

日本では大学を卒業し一斉に就職します。就職活動の重要なポイントはどの企業に就職できるかという点です。自分がどんな仕事をしたいか、どんなスキルを持っていて活かせそうかということではありません。つまり就職したばかりのころは「Labor」として働くことになり、自分のスキルを磨き自分の特性に合う仕事を模索する。その中で「Labor」が「Work」に変化していく。

「Play」は卓越した能力やセンスが求められるので実践しているひとはほんの一握りのひとたちでしょう。では私たちの多くは「Work」なのでしょうか。自分の意思で主体的に職業を選択し、自由意思のもと契約を結んで仕事をする。

「Labor」になっていませんか?

「Work」であったはずの私たちの仕事がいつのまにか「Labor」になっていませんか。日本のホワイトカラーの仕事は欧米に比べてルーチンワークの割合が高く、ともすると単純な事務作業を繰り返すだけになりがちです。作業の意味を考えることなく、あたえられた作業をただこなす奴隷的な働き方。そんな働き方にどんな意味があるのでしょうか。

自分がいま取り組んでいる仕事が「Work」なのか「Labor」なのか。どんなに大変な仕事であっても自分が主体的に働く「Work」でありたいもの。「Labor」ではなりたい自分に一歩も近づくことができません。将来なりたい姿や目標をもって日々がんばっているのに、日ごろ仕事に取り組む姿勢によって時間が経つにつれてだんだん差がついてしまいいつまでたっても目標に辿り着けなくなってしまうのです。